
「5歳のスイングと、何ひとつ変えなかった」— フレディ・フリーマン、2500安打の朝に
"The same swing since age five" — Freddie Freeman on his 2,500th hit
“主を愛し、ライナーを打ち、健康でいなさい。1、2、3、それだけ。”
ナイトゲーム明けのデイゲーム。少し眠そうな顔でMLB Networkの朝番組『MLB Central』のソファに腰を下ろしたのは、前夜にキャリア通算2500安打へ到達したばかりのドジャース一塁手、フレディ・フリーマン。番組は彼を「現役でこれを成し遂げたのは彼だけ」と讃えた。派手なガッツポーズも、特別な演出もない。彼が2500本目に選んだのは、いつも通り——センター返しのライナーだった。
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“自分の代名詞であるセンターへのライナーで決められたのは、最高の気分だったよ。これは積み重ねなんだ。安定して立ち続けること、努力、苦労、そして家族と離れて過ごした時間。その全部がこの一本に詰まってる。”
「10年前なら、軽く受け流していた」
相手はピッツバーグの剛腕ポール・スキーンズ。フリーマン自身、「ポールと対戦するんだから、今日はたぶん無理だろう」と思っていたという。それでもしっかり捉えてみせた。若い頃の彼なら、こんな記録は笑って受け流して次の打席に向かっていた。でも、今は違う。
“この歳まで長くプレーしていると、ふと自分が何を成し遂げたのかに気づく瞬間がある。試合後にチームが乾杯してくれて、仲間が『とんでもない記録だ』と言ってくれて——そこで初めて、一歩引いて『ああ、これは本当にすごいことなんだ』って実感するんだ。”
乾杯の締めに、デーブ・ロバーツ監督(ドク)がこう言った。「あと500本だ」。3000安打クラブ——歴代でわずか33人しか足を踏み入れていない領域までの、残りの数字だ。
“だから僕は言ったんだ。『じゃあ今日からその旅を始めよう』ってね。”
一貫性とは「毎日、同じ人間でいること」
「あなたにとって一貫性とは?」と問われたフリーマンの答えは、彼のキャリアそのものを言い表していた。
“とにかく試合に出続けることだよ。毎日スイングできるわけじゃない。気分がいい日ばかりでもない。子どもに夜通し起こされた朝だってある。それでもグラウンドに出て、ルーティンをこなして、準備をする。監督が何の心配もなく僕を3番に書き込めるように。夜、枕に頭をのせたとき『チームの勝利のためにできることは全部やった』と言える——僕にとっての一貫性はそれなんだ。”
“どんな試合をしていても、誰にも気づかれないようにしたい。いい日も悪い日も、同じ人間でいたいんだ。”
メジャーに上がった頃、彼は先輩たちから一つひとつを盗んで自分のものにしてきた。「17年間、ずっと人から何かを学び続けてきた」と振り返る。
父からの電話、祖父からの言葉
2500本目の夜、ソファでくつろいでいると父からFaceTimeがかかってきた。ただ「お前を誇りに思う」と伝えるために。
“いつも言ってることだけど、これは全部、父のおかげなんだ。父が僕に野球を好きにさせてくれた。毎日バッティング練習に付き合ってくれたのも父だ。父がいなかったら、僕は野球をやっていなかった。”
その父が最近くれるアドバイスは、たった一つ。「ポジティブでいろ」。
“このゲームはすべてメンタルなんだ。ここにいる全員がいいスイングをするし、全員が才能を持っている。でも『自分はダメだ』と思った瞬間に、本当にダメになる。だから幸せでいること、“今この瞬間”に集中すること、ポジティブでいること。それが一番のアドバイスだよ。”
そして祖父から授かった、彼の原点とも言える言葉がある。「主を愛し、ライナーを打ち、健康でいなさい。1、2、3、それだけ」。あらゆる段階でそばにいてくれる、本当に近い家族に恵まれた——そう彼は言う。
「5歳のスイングと、ほとんど同じ」
打球角度、軌道、ホームランの量産——キャリアの途中で、流行の“正解”はいくつも通り過ぎていった。だがフリーマンは一度も揺らがなかった。
“僕の構えを見てくれよ。5歳の時と、36歳になった今で、スイングはほとんど変わってないんだ。”
マイナー時代、多くの人が彼を“放っておいてくれた”幸運も大きかったという。彼が貫いたのは、シンプルな哲学だった。
“3割を打って、ギャップ(左中間)を抜く打球を打つ。それ以外の誰かになろうとしたことは一度もない。3割打って毎日試合に出れば、175〜185本のヒットに、80個くらいの四球が乗る。つまり260〜270回は塁に出る計算だ。ランナーを出して、守備にも投手にもプレッシャーをかける——野球で勝つってそういうことなんだ。”
“だから打ち方を変えようとしたことはない。ただ頑固に、左中間のギャップにこだわり続けただけさ。”
子どもたちへ——「思いっきり楽しめ。それだけ」
ワールドシリーズの、ある決勝の場面。スタジアムの通路で、彼は泣いていた。観客が選手の名前を叫び、その選手になりたがっている。子どもたちのことを考えると、こみ上げてくるものがあったのだという。今、打席に立つ若い選手たちへ、そして野球を見る子どもたちへ。彼のメッセージは驚くほどシンプルだった。
“思いっきり楽しめ。それだけだ。”
子どもたちはよく彼に「どうすればメジャーリーガーになれますか?」と聞いてくる。フリーマンの答えは、いつも同じだ。
“今はそんなこと考えなくていい。フラッグフットボールでもバスケでもやって、いろんなスポーツを楽しめばいい。週に12回もレッスンを受ける必要なんてない。痛いところがあれば休んでいいし、練習をサボったっていい。子どもは子どもらしくあればいいんだ。”
“3打席三振したって構わない。アイスクリームを食べに行けばいいんだ。野球は楽しむもの。人生の後半になるまで、“仕事”にするべきじゃない。”
彼が我が子にアドバイスを始めるのは、高校2〜3年になってから。UCLAやUSCといった進路が現実味を帯びてくる頃だ。それまでは、ただ打席に立って楽しむこと。
そして、最後はやっぱりコーヒーの話
真剣な話のあとは、お決まりの軽口で締めくくられた。実はフリーマン、無類のコーヒー好き。今飲んでいるのは——トリプル・カプチーノ。
“家族にはカフェインの量を知られたくないんだ。心配されるからね(笑)。”
前夜、番組宛に「ラテとコーヒーケーキが欲しい」とメールまで送っていたという。だが、ピッツバーグのホテルのスターバックスはコーヒーケーキが売り切れ。
“2500安打を打った男に、ピッツバーグの誰もコーヒーケーキ一つ用意できないのか。頼むよ(笑)。”
積み重ねた数字も、貫いたスイングも、コーヒーへのこだわりも。何ひとつ変わらないのが、フレディ・フリーマンという男なのだ。次の目的地、3000安打への旅は——もう始まっている。
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