
王者たちの言葉で振り返る世界一 — ムーキー・ベッツ『On Base』優勝メンバー座談会
Champions, in their own words — On Base with Mookie Betts
“ひどい内容のまま、それでも俺たちはワールドシリーズを勝った。それくらい、俺たちはヤバかったんだ。それが誇りだよ。”
ブルージェイズとの死闘を制し、ワールドシリーズ連覇を成し遂げた直後。ムーキー・ベッツが自身の番組『On Base』に、優勝メンバーを次々と招き入れた特別編だ。シャンパンの匂いが残るロッカーで語られたのは、主役級のスターの話だけではない。約1ヶ月スタメンを外れていた男、初めてのブルペンに震えたルーキー、そして優勝の瞬間に気づかず肩を作っていたベテラン——“全員が貢献した”チームの内側を、選手たち自身の言葉で。
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「準備し続けろ」——ミゲル・ロハスの第6戦
最初に話を向けられたのは、約1ヶ月スタメンを外れながら第6戦で起用され、堅守でチームを支えたミゲル・ロハス。ベッツは数日前、シャワー上がりの彼に「調子はどうだ」と声をかけていたという。
“正直に言うと、あの数日前の時点では状態が良くなかった。もしあの日に『行け』と言われてたら、第6戦みたいには集中できてなかったと思う。ネガティブになることもできた。でも、こんなに長くみんなで戦ってきたんだ。声がかかったときに準備できてなかったら、それこそチームに対してあまりに身勝手だろ、ってね。”
マウンドではなくセカンドの守備位置で、彼は同じ言葉を自分に言い聞かせていた——“do your part”(自分の役割を果たせ)。ゴロを捌き、いくつも併殺を取り、最後は際どい送球をベースに残ったまま受け止めた。ベッツが「あの最後のプレーは詩みたいだった」と讃えると、ロハスはこう返した。
“ああいうのは“神様からの授かりもの”だと思ってる。教えて身につくものじゃない。お前の打撃やジャンピングスローだって同じだろ。どうしても勝ちたいって気持ちがあると、自然と体が動くんだ。”
初めてのブルペン——ルーキー「ロボ」
今季は右腕「ロボ」にとって試練の年だった。先発しか知らなかった男が、ポストシーズンでリリーフに回る。ベンチで動かなすぎて、スマートリングに“昼寝した”と記録された——そんな笑い話まで飛び出した。
“シリーズのどこかの試合で、ブルペンであまりに長く動かなかったから、リングが『昼寝してた』って判定したんだ。リラックスしつつ、準備はする。その繰り返しさ。”
相手のヒメネスに死球を当て、そのまま睨み合いになった場面が、沈んでいたチームの目を覚ました。
“マウンドの上で何かを企んでたわけじゃない。ただ、向こうが何か言ってくるなら、俺も言い返す。文句があるなら言い返す。みんな勝負師なんだ、それだけさ。個人的な感情じゃない。”
ベテランの仕事は「お前のままでいけ」
登板機会こそ少なかったが、若い投手たちに寄り添い続けたベテラン「カーブ」。ベッツは「投げなくても、毎日試合に出る全員と同じくらい大きな役割だった」と讃える。
“うちの若い連中はとんでもなく才能がある。だから『何を教えてるんだ?』と聞かれても、答えは“何も教えてない”。ただ『行って、お前のままでいけ。それで十分通用する』と伝えるだけだ。このリーグは厳しい。自信こそが全てなんだ。”
ブレイク・スネルの“言い聞かせ”
18歳の頃から対戦し続け、今年ついに同じユニフォームを着たブレイク・スネル。優勝までの快投の秘密を、ベッツが訊いた。
“結局はマインドセットだよ。いい登板を一つする。そこから組み立てて、自分に言い聞かせるんだ——『お前は世界一だ。証明してみせろ』ってね。攻めて、攻めて、攻め続ける。そうすると勝ち星が積み上がっていく。”
“LAの方が好きだ。悪いプレーをすれば騒がれるし、いいプレーをしても騒がれる。両面あるけど、俺はそれが欲しかった。陰口を叩かれるのも好きなんだ。”
18回の死闘、そして相手打線の不気味さ
シリーズには18回までもつれた一戦があった。ベッツ自身は「自分が経験したプレーオフの中でも、いちばん退屈な18回だった」と本音を漏らす。延長は本塁打頼みの大味な展開。チームが年長だったこともあり、その代償は大きかった。
“うちのチームは年寄りだからな。あの試合のあと2試合は、みんなヘトヘトだった。早めに点が取れてれば……ってね。”
ブルージェイズ打線の不気味さも、投手陣は口を揃える。クレメント、内野安打を量産したバージャー、片足のビシェット、そして司令塔ヴラディミール・ゲレーロJr.。チーム全体で同じアプローチを徹底してくる相手だった。
“0-2から、ボール3つ分は低めに外したはずの球が、ただ“空いてる場所”を見つけてヒットになる。いつもヒット。マジでいつもヒットだった。”
それでもドジャースは、このシリーズを“自分たちのまま”戦い抜いた。上がりすぎず、下がりすぎず。終始、同じ温度で。
引退する“22”、優勝の瞬間を知らなかった男
4人の子ども(さらにもう1人増える予定)を持ち、今季限りでの引退を決めた背番号22=クレイトン・カーショー。最後の登板には、忘れられないエピソードがある。彼はブルペンで肩を作りながら、チームが優勝した瞬間に気づいていなかったのだ。
“ワールドシリーズに勝ったこと、知らなかったんだ。ヴラディがダブルを打ったのが見えたから、急いで肩を作り始めた。ずっと俺の顔を見てるやつがいて、『なんで投げてるんだ? 終わったよ、優勝したんだ』って。それで初めて気づいた。『あ、そう。よかった』ってね(笑)。”
““ノープランというプラン”でしばらくいくよ。趣味も特技もない。ギターも弾けない。野球をやって、子どもの面倒を見る。それだけさ。”
トレード組AC、そして“ポスタライズ”されたケケ
トレードで加わったACは、スターだらけのロッカーに溶け込めるか不安だったと明かす。初日、VRゴーグルでルーティンをこなしていたらロハスに写真を撮られ——それで一気に打ち解けた。一方、守備の名手ケケ(キケ・ヘルナンデス)には、世界一の懸かった場面で“倒れ込んだ”一幕があった。
“最初は『捕った、いける』と思ってた。次の瞬間、跳び越えられて、地面に倒れて——静寂が聞こえた。たぶん脳が心を守ろうとしてたんだ。『負けた』と思い込んでた。仲間が『大丈夫か?』って来たから、『俺はいい、捕ったのか?』。『ああ、捕ったよ』。それでようやく笑えたんだ。”
勝負を決めた2発——マンシーとロハス
第6戦、左打者に強い相手右腕に手を焼くなか、マックス・マンシーは発想を切り替えた。
“ヒッティングミーティングでも言ったんだ。『あいつは左投手だと思って打つ』って。右投手の球は自分に向かってくるから避けたくなる。でも“左の、真っ直ぐ落ちてくる球”だと思えば、振り抜ける。”
“自分のホームランの時は、まだ1点ビハインドだったから、どれだけ喜んでいいか分からなかった。でも頭の片隅で思ったんだ——『これで翔平にもう1打席回る』って。チャンスは繋がる、ってね。”
第7戦の継投——スミスとヤマモト
司令塔ウィル・スミス(スミティ)は、中0日で上がったヤマモト・ヨシノブとの第7戦を振り返る。先頭ヴラディに与えた二塁打、そしてカークとの併殺——一球ごとの読み合いだった。
“カークは2ストライクまで、まず空振りしない。当ててくる。だから0-2になった時、『よし、三振を狙いにいける』と思った。三振を取りにいけば、結果的にゲッツーのチャンスも生まれる。そして彼は、俺の正面にゴロを打った。”
“中0日なのに、中6日みたいに見えた。初球が92マイル(約148キロ)だ。どうやってるんだ、って感じだよ。あれは一生忘れない。”
「俺たちはこの試合の中にいる」
4-2と離された第7戦。ボー・ビシェットの3ランで0-3となった瞬間、グラスノー(グラス)はむしろ手応えを感じていたという。
“『これはとんでもない試合になる』って思った。一度も“終わった”とは感じなかった。ただ、顔面を一発殴られる必要があっただけなんだ。あのシリーズは、ずっと一進一退だった。”
そして、その“殴り返し”はロボのマウンドから始まった、とチームは振り返る。ヒメネスへの死球、そして睨み合い——あの瞬間が反撃の合図だった。
“ロボがマウンドの上で、降りる前にはっきり言ったんだ。『俺たちはこの試合の中にいる』って。あれが俺たちの反撃の合図だった。”
ひどい内容で、それでも勝った。連覇という結果だけが、すべてを物語っている。シャンパンに濡れたロッカーで、王者たちはそれぞれの“役割”を、静かに誇っていた。
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