
「これはインタビューじゃない、会話だ」— ニック・カステヤノス、ムーキーと語る
"This is a conversation, not an interview" — Nick Castellanos on On Base
“俺にはただのボールには見えない。何年も貧乏くじを引かされ続けて、フラストレーションを溜め込んだ一人の女性が見えるんだ。”
ムーキー・ベッツの番組『On Base』に、2度のオールスター選出を誇るニック・カステヤノスが登場。歯に衣着せぬ物言いで知られる男は、開口一番「これはインタビューじゃない、会話だ」と笑った。メディアへの“一語回答”の流儀から、フリップ携帯で人生をシンプルにした2021年、引退後にスタンドで野球を観る夢、そして「ボールは必ず子どもに」という信念まで。終始“グレイトフル(感謝)”という一語に貫かれた30分。
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メディアへの“一語回答”という処世術
フィラデルフィアという厳しい市場で戦うカステヤノスは、記者の質問にしばしば一言だけで答える。秘訣は、記者が質問の中に“答え”を入れてくることだという。
“記者は質問の中に答えを入れてくることが多い。『外角低めのスライダーを、右方向に運ぼうとしたんですか?』ってね。だったら『イエス』。それで済む。説明はしない。次の質問を待つだけさ。”
語彙の豊かさは母親譲りだという。
“子どもの頃に叱られると、母は難しい言葉を山ほど使ってまくし立てた。正直、半分は何を言われてるか分からなかったよ(笑)。”
そんな彼の“今日の言葉”は、ずっと同じだ——「グレイトフル(感謝)」。
“人生が速く回り始めて、高い期待や“こうあるべき”っていう理想に追われると、人は感謝を忘れる。でも毎日それを実践すれば、ふと気づくんだ。『最高じゃないか。今LAにいて、ムーキー・ベッツと喋ってて、今夜は試合がある』ってね。”
フリップ携帯が教えてくれたこと
番組恒例の「オン・ベース/オフ・ベース」(その話題に“賛成か反対か”を答える企画)。最初のお題は、彼が2021年に実践した“フリップ携帯生活”だ。連絡先はチームメイトだけ、ネット接続のない旧型iPod。皮肉にも、それはキャリアで最高の一年になった。
“ノイズが少なかった。世界は“目の前にあるものだけ”だった。自分よりずっと賢いデバイスを持つと、好奇心が麻痺するんだ。常に何かを食わせてくれるからね。”
今はスマホが腰にある。情報には便利だが——。
“試合のあと、良くても悪くても、フィードは“それ一色”になる。何も見なくていいのは、ある意味すごく心が休まるんだ。技術的にも“存在しない”んだから、今やってることに影響しようがない。”
引退したら、外野席で野球を観たい
「引退したらブリーチャー(外野席)で観戦する」という話題には、全力で“オン・ベース(賛成)”。きっかけは、現役のまま外野席で試合を楽しんだアンソニー・リゾの姿だった。
“ああいう機会は、俺たちにはないんだ。いつも反対側で、野次られる側にいる。だからこそ、あれは特別なんだ。一ファンとして座って試合を楽しむ——あれは大きな意味がある。”
彼自身、子どもの頃はマーリンズの試合に通った。父の友人だった投手アレックス・フェルナンデスの縁で、ワールドシリーズの舞台もスタンドから観たという。
“全30球場には“プレーしに”行った。だからバケットリストには載ってない。でも、地元の球場に戻って、子どもの頃に応援していたチームを一ファンとして観る——それには“オン・ベース”だ。”
「ボールは、必ず子どもに」
そして、あの“ホームランおばさん”騒動。子どものために取ったボールを、大人の女性が奪い取った一件だ。だがカステヤノスの見方は、意外なほど優しい。
“たぶん彼女は、人生のいろんなことに長年ずっと腹を立ててきたんだ。それが、この一瞬で全部噴き出した。『ここでは二番手で終わりたくない、これは自分のためのものだ』ってね。彼女の中には、いくつか抱えてるものがあったんだと思う。”
かつて彼がマーリンズにいた頃、隣のロッカーだった同僚は、ボールを奪われた子どもとその家族を、試合後に手厚くもてなした。だからこそ、信念はシンプルだ。
“キャッチャーをやる時でさえ、俺はいつも子どもを狙ってボールを渡す。ボールは必ず子どもに。あの子たちの方が、ずっと長く覚えていてくれるからね。……でも、あの女性も、今は元気にしてるといいなと思うよ。”
息子リアム、そして“父であること”
息子リアムはトラベルボールに打ち込んでいる。遠征で側にいられない罪悪感を、カステヤノスは元同僚アニバル・サンチェスの言葉で乗り越えたという。
“『ユニフォームを着て、息子をクラブハウスやグラウンドに入れてやれるだけで、彼は多くを学んでる。お前は、一緒にいない時も一緒にいるんだ』ってね。自分の父が俺にしてくれたように、リアムにとっても“そこにいる父”でいたい。だからこそ、あの言葉に救われたんだ。”
一語回答の裏にある思考の深さ、フリップ携帯で守った“今この瞬間”、そして子どもへ向けるまなざし。歯に衣着せぬ男の「会話」は、終始“グレイトフル”という一語に貫かれていた。
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