
一度も追いついてないのに、1位に戻ってた
He Never Caught Up in WAR, and He's Back at No. 1
“PCAがMVPじゃない理由を教えてくれ”
前号から4週間ぶりの定点。ボードを開いたら、MVPの1位が大谷に戻ってた。あれ、いつの間に抜き返したんだと思ってWARを見たら、この4週間ずっとPCAが上のまま。追いついてすらいない。意味が分からなくて、うちのデータを全部並べ直したのが今回。
9日で5回、1位の名前が入れ替わってた
前号の数字から始める。7月27日のナ・リーグMVPボードはPCAが94.6で1位、大谷が93.5で2位。今日は大谷が96.3で1位、PCAが95.2で2位。まるごとひっくり返ってる。で、その間の毎日を並べ直したら、8月7日に二人が95.4でぴったり並んで、そこから8月15日までの9日間で1位の名前が5回入れ替わってた。15日以降は大谷が9日連続で座ってる。
なのにWARのほうは、一度も追いついてない。前号で1.1離されたところから今日まで、差が0.8を切った日が一日もないんだよ。8月11日にいちど1.5まで開いて、いまが1.3。詰まるどころか広がってる。抜き返した側のほうが、ずっと負けてる。
なんでこうなるかというと、ボードの配合がWARだけじゃないから。打撃の中身が半分、WARが4分の1、あとは本塁打と走塁と守備で残りを分けてる。この4週間で大谷のwRC+は144から152に上がって、PCAは156から154に下がった。守備はPCAが21.2でリーグ屈指、大谷は投手兼DHだからマイナス12.7で、ここは勝負にすらならない。つまり物差しを1本差し替えるだけで、1位の名前が替わる。俺は毎晩この二人の数字を並べてるだけなんだけど、どっちが上かを決めてるのは選手じゃなくて、測り方のほうなんだよな。
51日、動かない3.0
前号の締めで、大谷の止まった防御率1.79もそのうち動き出す、みたいなことを書いた。動いてない。14登板85.2回、8勝2敗、95奪三振、防御率1.79。7月27日のスナップショットと一文字も違わない。最後にマウンドで投げたのはパドレス戦の6回3失点で、そこから50日たってる。
WARの時系列を出したら、もっとはっきりしてた。投手WARは7月4日から51日間ずっと3.0で真っ平ら。しかも小数第2位まで見ると2.97から2.95へ、ほんの少しだけ減ってる。止まってる人の価値は、周りが動くぶんだけ静かに目減りしていくのね。折れ線が水平のまま下がるって、けっこう残酷な絵だった。
“大谷は故障を抱えながらまた素晴らしい試合だった。2安打、二塁打、2打点に2得点。もし投げられてたら勝ってたかもな”
その50日、打つほうは出ずっぱりだった。本塁打を8本足して30号、打者WARは2.8から4.1まで積み上がってる。投手の欄が完全に凍ったまま、打者の欄だけでMVPボードの1位を取り返した。冷静に並べると、これそうとう変なことが起きてる。
26回投げて、動いたのは0.1
同じ4週間を山本で見ると、逆のことが起きてる。7月27日はサイヤングボードの2位でスコア79.4。今日は4位で79.5。この間に26回投げて、防御率を2.72から2.61まで下げて、スコアは0.1しか動かず、順位は2つ落ちた。悪くなってないどころか、全部良くなってこれ。
“またしても山本に援護なし。ドジャースは山本が投げる日は毎回0点で抑えてくれないと勝てないと思ってる”
球種の設計図も4週間前と並べてみた。これがまた見事に動いてない。407球投げて、配合で一番変わったのがカッターの13.8%から15.3%で、球速はどの球種も0.1マイルの範囲に収まってる。スプリットの空振り率まで小数第1位でほぼ同じ。この人、ほんとに何も変えてない。
動いたのは周りのほうだった。ルザードが76.4から83.5まで伸びて2位に上がり、スキーンズは防御率が3.65から3.95に膨らんで5位から9位まで落ちた。ボードのスコアはリーグの中での相対値だから、自分が良くなっても、周りがもっと良くなれば席は下がる。順位が落ちた日に、その人が悪くなったとは限らない。これは山本を追いかけてなかったら一生気づかなかったと思う。
4週間ぶんの数字を並べて、最後に残ったのは動いた数字じゃなくて動かなかった数字のほうだった。1.79と、51日ぶんの3.0と、山本の0.1。9月に賞が決まるころには席順なんてまた何回も入れ替わってるはずで、そのとき俺が思い出すのはたぶん、この静かな4週間のほうな気がする。次の定点までに、あの凍った欄が動いててくれたら最高なんだけど
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